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急遽8月中旬から2週間の研修が決まってしまい、ノーパソを持っていない身なので更新がまたしても色々遅れます。という予告です。
ポメラを持っていくので小説の原稿を少しでも進めていきたい…。
今年の発行予定に小説2冊、とらんぷ本の加筆修正が残っているのでのんびりしていられない現状という。
いつも下半期にイベント詰めちゃうのでこうなるのは目に見えてるんですが。夏はどうしても原稿まで気力が持っていけないので仕方がない…目のこともあるのであまり無理せずやっていきたいです。
2018/07/29(日) 05:31 サイトについて PERMALINK COM(0)
畳の上で菊が静かに寝そべっている。この湿度の高い日本の夏を何度訪れてもなれないでいたギルベルトは、なるべくお互いが不快にならないよう少し離れた場所に腰を下ろした。
「…暑いなら、クーラーをいれて下さっても構いませんよ?」
夏バテしているのか目を閉じたまま気だるそうに菊は言った。
「…いや、いい。夏は暑いもんなんだろ?確かに暑いとクーラー入れたくなるけどよ、そうすっと折角の『日本』を否定しちまう。我慢すんのは得意な方だぜ?」
自分達にとってはそんなものが無かった時間の方が長い。セミの声が鳴り響く。
「……我が儘、聞いてくださいますか?」
注意して耳をすませていなければ聞こえないくらいの声。返事はしない。用意されたアイスコーヒーを飲んでいると、のそり、と仰向けていた身体を反転させ肘で起き上がる。と、ずりずりと下半身を引き摺りながらゆっくりと此方に近付く。乱れた着物をただすことなく、両手を広げギルベルトに凭れ込もうとすれば、勢い余ったのか二人とも後ろに倒れてしまった。
「……おまっ。……暑くねぇのかよ。」
せめてもの抵抗。返事はない。再び訪れる静かな時間。
「…この時期になると、どうしても…、」
先程よりも弱々しい声に胸の奥がざわめく。この時期―ああ、そういうことか。単色刷の日めくりカレンダーを見れば今日が八月十五日を表していた。
「考えるな、思い出すだけにしろ。」
そう強く言えば、僅かに黒髪が揺れた。落ちそうな身体を右腕で支えてやり、空いていた左手で汗で少しへばり着いた前髪をそっと掻き分ける。

―夏の幻でも、見ているのだろうか。

あやすように時折右手でとんとん、と叩いてやると規則正しい肺の動きを感じた。

初出ツイッター/2009年か2010年頃


夏の幻01夏の幻02
2018/07/30(月) 00:00 ぷにち PERMALINK COM(0)
年の春は天候が悪く夏も冷夏になるという予想などどこに行ったのか、まだ八月にもなっていないのに茹だるような暑さが続く。三十度を越えただけでも珍しかった昔を思いだし、やめた。縁側の木陰に座りパタパタと団扇を扇いでいると上半身を裸のままギルベルトが此方に腰かけてきた。
「あーっちいー…お前んとこそんなに高いとも思わねぇのになんでこんな汗でんのがわかんねぇ」
暑いならもう少し距離をとればいいのに自分のすぐ横に座っている男の身体をふと盗み見る。と、背中にある赤い引っ掻き傷に気がつき一気に体温が上がる。
「…湿度が、高いからですかね…イタリア君のところには行かないのですか?」
赤い顔に気がつかれないようにそっとそらす。
「あー去年はルートと行ったけどなぁ。誰かさんが来ないおかげで独り楽しい旅行だったぜー…ってなに顔逸らしてんだよ!ちくしょう。笑ってんのか?」
「わ、笑ってなど、…!」
失敗した。と思うと同時に肩を掴まれ体ごと彼に向かうように動かされれば、逃げ場などない。
「……………お前、かお
「貴方が処構わずそんな格好でいるから悪いんです。いい加減上衣を着てください。」
またいつものようにからかわれるくらいなら認めてあたった方がまだマシだ。扇いでいた腕を止めジト目で睨み付けると、あの意地の悪い笑みを浮かべた。
「ケセセ…昨日、誰かさんが思いっきり引っ掻いてくれたおかげでまだヒリヒリすんだよ。」
「…?!!それはっ……その…っ」
大失態だ。これでは何も言い返せない。赤い顔でモゴモゴしていれば男らしい骨ばった掌で顔を触れられる。
「…独り楽しい避暑旅行より、あっちいけど引きこもりじじいと一緒に居た方がいいに決まってんだろ?」
見つめた其の顔が、ほんのりと色付いている気がした。

初出ツイッター/2009年か2010年頃

鬼灯01鬼灯02
2018/07/29(日) 00:26 ぷにち PERMALINK COM(0)
 昼間の暑さなど忘れてしまうほどの涼しい風になびかれちりんちりん、と鈴が鳴る。耳を傾ければ虫の音が響きわたりギルベルトは静かに瞳を閉じた。
視覚の支配から解放され一気に聴覚が冴え渡る。暫くそうしていると後ろから声がした。
「…昼間はあんなにはしゃいでおられたのに夜になると静かに成るなんてまるで蝉のようですね。何処か具合でも悪いのですか?」
 普段は空気を読んで発言を慎むなんて言われてるがそいつは騙されている。こいつは俺に対して慎むことは滅多にねぇ。
「…風に、あたってんだよ。冷たい風が吹いてっから涼んでんだ」
「………そうですか」
 素なのか、摺り足で気配を殺して近付き自分より少し距離を空けた場所に腰をつく。間に盆があるせいで近寄れとも言えずこの距離に少し腹がたった。こいつは距離を掴むことに、空間を読みそれを利用することに長けている。今もそうだ。引き寄せたくとも盆が邪魔で手をだせない。
無理矢理にでも引き寄せ、盆にあるビールとつまみをひっくり返した日にはこいつが鬼のように憤慨するのは目に見えている。
 今この瞬間を、自分を支配しているというのが気に食わず、ならばこのまま無視を決めているとふらっ、と縁側から庭へ歩き出した。
「・・・花火、しませんか?丁度昨日買い置いてたんです」
 そういって少しだけ嬉しそうに声を弾ませると返事を待たずにいそいそと準備を始める。蝋燭と、水を張った小さなバケツ。そして線香花火。今まで何度か花火をしたが、こいつは必ずといっていいほどこの小さく地味な花火を買ってくる。そしていつも最後にやるのだ。
 一本一本、静かに丁寧に、およそ花火の遊び方とは違う。
「…なんだよ。今日はその小さいやつだけか?」
「ええ。他のもありますがそれはフェリシアーノ君たちが来た時にでもと思いまして」
 年甲斐もなく花火を振り回してはしゃぐ『大きな孫』を想像しているのだろう。目を細めて笑う顔はまるで保護者の眼差しだ。ルートとフェリシアーノとはいまだ付き合いが続く。下手をすればティノやエリザベータ、ローデリヒとも合わせることもある。己の利益だけの同盟ではない、あの日々が決して無駄ではなかったと今でも思い知らされる。たとえもう、自分が亡国であろうとも。
 マッチを擦り蝋燭に火を点すと炎が揺らめく。ジジ・・と蝋燭の火が安定したのを確認すると右手を振りマッチの火を消した。瞬間の、火薬の臭いはすぐに消える。線香花火を一本持ち庭を背に、体を此方に向けしゃがみこみゆっくりと蝋燭の炎へとおろした。
「・・・・・・・・・・・」
 線香花火の先端に火が点されると同時に中に包まれていた火薬が燃え出しバチバチ・・と火の粉を彼岸花のように咲かせながら消えていく。先の玉が少しずつ大きくなり
「あっ・・・・」
 ほんの少しの揺れで地面へと落ちた。残念そうに息を吐くと燃え残った紐をバケツへと落とし、二本目に手を伸ばす。周りの民家も殆ど明かりを消し、この家も必要最低限の電気しか点けていないせいか普段よりも闇が濃い。耳を澄ませば虫の声と時折なる風鈴の音色、そして花火の咲く音が静寂を支配した。
 優しく頬を撫でる風に乗り火薬の臭いが鼻腔をくすぐる。何十年、いや何百年も嗅いできた火薬の臭いが今では懐かしくすら思う。
「・・・・・・・・・・線香花火の消える直前は『散り菊』って言うんで。」
 二本目の花火を咲かせながらポツリと呟く。
「『菊』は死者へ手向ける仏の花。どんなに足掻いてもがいても、非常な運命に翻弄されてしまう人の一生のようではありませんか。我々に比べれば彼らの命はまるでこの線香花火のように儚い灯火のようだ」
 ただ静かに淡々と発せられる言葉は小さな花火の音にかき消えた。二本目の花は最後まで燃え、紐には不純物の塊が黒く残り白い煙がうっすらとたち花火が終えたにもかかわらず菊はただ静かにそのあとを見つめる。
「…散り菊、か。ならお前はそいつらの最期を見つめているんだな」
 三本目の線香花火に灯を燈す。
「最期を見つめ・・・・お前は何を思う。もしも、国の最期――っ??!!!」
 紡ごうとした言葉は最後まで発せられることなく変わりに後頭部に受けた衝撃に顔を盛大にしかめた。いきなり抱き着いてきた菊を受け止めきれずに後ろ倒れこみ廊下に頭をぶつけたのだ。この近距離で、前触れも躊躇もなく。
「・・・っ・・つ・・・全力かよ・・・」
 菊は自分の身体にしがみつき、今は大分筋肉が衰え薄くなった胸へ顔をうずめる。抱きしめるその両腕が震えているような気がした。暫くの静寂。時折その背中を軽く叩いてやると安心したのか自分を拘束している腕の力が緩んだ。
「・・・・貴方を、看取るくらいならば・・この両目など」
「・・・お前、泣くほどか?」
 両腕で落ちないよう抱え起き上がると甚平の胸の部分の色が変わっていた。
「お前をおいて消える気はねぇから安心しろ」
 喪失、消失。亡国となりいつ消えてもおかしくない存在となった俺がいつしかこいつの弱点となっていた。涙でぐしゃぐしゃになった顔を袖で乱暴に拭ってやる。

初出ツイッター/2009年か2010年頃

魂の灯火01魂の灯火02魂の灯火03魂の灯火04魂の灯火05
2018/07/28(土) 06:15 ぷにち PERMALINK COM(0)
過去ツイッターで投下したネタやらSSをまとめたり修正してこちらに乗せたいと思います。
設定によって「国」「人名」、各シリーズにカテゴリー分類させるので検索の参考に。
ツイッターは大体2009年~2010年頃に呟いたやつでこんなん自分呟いてたんだ、と今ではあまり記憶にないです…。
いやでも昔のほうが色々考えてたな???
2018/07/28(土) 06:11 サイトについて PERMALINK COM(0)
「マンネリってしないの?」
 菊様と。
 ローテーブルをはさみ目の前に座る人物の言葉に自分の隣りが激しく動揺した。
「ゲホゲホッ!!」
「あ、ああ!!ローデリヒさん大丈夫ですか!」
 爆弾発言を告げた人間が腰を上げて尚も咽るローデリヒを心配する。いつもなら無視をするか馬鹿馬鹿しいと鼻で笑うが今は呆れよりも”なぜそんな事がわからないのか”という疑問のほうがまさった。
「…長い人生の中、好物をたった数十回食べただけでお前は飽きるのか?」
 エリザベータが質問をしておいて自分の回答を期待しないのはいつものことで。今回も真相は気になるけれど回答は気にせずただぽつりとこぼしたものだったのだろう。自分が返した言葉に間抜けな言葉とともに意表を突かれたアホ面をこちらに向けた。
「あー…まぁ…成る程。好きな食べ物ね。食べ物ときたか…いやたしかに食べるという表現はある意味正しいわね」
 いまだ咳き込むローデリヒの傍に膝をつきその背中をさすりながら一人ぶつぶつと納得をする。
 グラスに残る琥珀の液体を一気に流し込み空にする。どうせこれからまともな会話はしないだろうとソファから立ち上がり部屋から出ようとすれば扉の前で声がかかった。
「酔ってるんだからさっさと寝なさいよ」
 その言葉にハンドルを掴む手を止め振り返る。
「酒に酔ったことはねぇ。一度もな…酔うのはこれからだ」
 後ろにいる二人にそれだけ告げて部屋を出る。控えめに明かりが灯された廊下をいつもよりゆっくりと歩み己の寝室へと向かった。
「マンネリ、か…今日はどうしてやろうかとあれこれ悩む時の方が多いんだがな」
 飽きる。満足する。その程度の価値しかないものならば早々に捨てているしこんなにも執着することはないだろう。世界に色と光を与え、いつでも自分を楽しませるあの存在を手放す日などこの先も訪れはしない。

「…惚気とか。何あのニヤつき顔!!」

マンネリ01マンネリ02
2018/07/27(金) 23:23 護衛騎士と主君 PERMALINK COM(0)
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