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 使用人に案内された庭園は古城の中でも修復が殆どされておらず、アーチ状の窓枠が連なる石造りの壁に蔦や苔で彩られていた。丁度フランシスが立っている入り口には木香薔薇やクレマチスがつたい、脇にはユーフォルビアとゲラニウムなどの草花が庭園を訪れる者を歓迎するかのように花を咲かせている。
 建物の隙間から届く日差しをうけ青々と輝く芝生と石畳がひかれた中央には休憩用にベンチと小さなテーブルが庭園の外観を崩さないようひっそりと置かれまるで時を止めてしまったかのような静寂に包まれる。
 木々のざわめきと鳥の鳴き声に混じり聞こえた歌声にフランシスは脚を踏み出すが使用人が肩を叩き制止する。口元に人差し指をたて"静かに"と、ウインクひとつの合図。今度は気配を消しゆっくりとその中央へと歩き出した。
 歌声が段々はっきりと聞こえてくる。低く、男性のものだ。その歌はゆったりとしたバラードのようで声音から相手への愛おしさが肌へ伝わってくる。自分の知る人物のあまりにも意外なことへの驚きのあまり鼓動が早く、緊張で額には汗までも浮かんでいた。ベンチを覆う草木の影に隠れていた銀髪をその瞳に映した瞬間、息が止まる。
「…俺はまるで夢か幻を見ているかのようだよ」
 陽気な挨拶も、かけようとした言葉も出てこず絞り出せたのはたったそれだけ。何度瞬きしても消えない幻にフランシスは苦笑う。
「久しぶりだな、ギルベルト。噂を聞いて来てみればお前、いつのまに騎士から聖母に転職したんだ?」
 銀髪の美丈夫がもっと幼い頃。やんちゃ小僧だった頃の笑い顔や、あの日から冷徹無慈悲と恐れられた無表情でもなく、先程までまるで絵画に描かれた聖母のような微笑みをしていた友人に目を細める。
 フランシスの言葉にギルベルトは何も返さず、止めていた身体をゆっくりと揺らし赤ん坊をあやし始めた。やがてフランシスの目の前に立つとギルベルトは目線を確認するように赤ん坊からフランシスへと移す。赤い瞳を見つめていた金の瞳が釣られるようにフランシスを見つめるとギルベルトの腕に大切に抱かれた赤ん坊が笑った。


「合格だとよ、良かったな。フラン」
「え?何、いつの間にお兄さん試されてたの?!というかお兄さんの美しさなら当然だよね?」


光の庭01光の庭02
2018/08/03(金) 04:59 護衛騎士と主君 PERMALINK COM(0)
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