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原稿が予定より遅れているのでしばらく更新が止まります。また息抜きに浮上したりお知らせがあれば更新します。
まともに連載のやつの更新ができてませんが…まぁのんびり…。

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2018/08/22(水) 08:34 護衛騎士と主君 PERMALINK COM(0)
拍手ぽちぽちありがとうございます。もう少し余裕ができたら拍手絵なんかも描き下ろしたいです。
以下、頂いたコメントのお返事になります。遅くなりすみません。


8月1日2時過ぎの方へ
支部からわざわざご連絡いただきありがとうございます。ドラマティック…もったいないお言葉です。ありがとうございます。
絵では伝えられない空気感、なんとかこれから頑張って出していきたいです。
今年の夏はとにかくPCにも自分にも無理させないようにしているので続きまでお時間かかるかと思いますがのんびりお待ち頂ければ。
拍手ありがとうございました。
2018/08/08(水) 05:05 拍手お返事 PERMALINK COM(0)
 茹だるような暑さをもたらしていた太陽が隠れ、リリリと虫が鳴り始める。空が紺碧に染まりやがて真珠をちりばめたように煌めく星々と宵闇が訪れた。
 開け放たれた窓辺へ菊は掛けていた上着を落とさないようおさえて立つと、ふわりと風が舞った。僅かに水分を含んだ髪が風に煽られさらさらと揺れる。程良く冷えた風が風呂上がりの熱をはらんだ肌に気持ちがいい。
「あまり身体を冷やすな」
 少し掠れた独特の声が後ろからかかる。その声音がいつもより不機嫌そうな気がして菊は小さく微笑んだ。
 季節は夏。今、滞在しているこの地は避暑地として毎年訪れている場所である。各地で猛暑が続くとはいえここは夜になればそれなりに涼しくなるため、薄着で過ごし風邪をひかないよう心配しているのだろう。いつまでたっても自分の感情に不器用な表現しかできない彼へ思いが募る。けれど今はこの火照った身体を少しでも冷やさなければ。
「ええ。でも、こうして熱を逃がさないと貴方、嫌がるでしょう?」
「…は?」
「おや、無意識だったんですか? あがってすぐに寄ると嫌そうな顔するから。てっきりこの季節は暑くて隣によるのは嫌なのかと」
 窓の外から視線を移しギルベルトを見れば何か言いたそうに口を動かし、けれどなにも言わず思考する。珍しいこともあるものだ。流し目が動き菊の姿を捕らえるとその紅玉の色彩が深まった気がした。
「…こっちにこい」
「はいはい」
 有無を言わせない言葉と、無表情の奥に隠れる感情を菊は違わず理解する。開け放った窓はそのままにゆっくりとギルベルトの元へ歩む。目の前へ辿り着けば腕を取られその逞しく鍛えられた身体へと閉じこめられてしまった。
「お前は王妃の血が濃いだろう。極東の人間は体臭が殆どしない。お前もだ」
 プロイツェン王国は周辺国よりも僅かにその歴史が短い。前王国はこの地に古くから禁忌とされていた『運命の子』を王にしたために滅んだと記され、それ故に前王家の分家――今の王族――は王族貴族に産まれた『運命の子』を丁重に扱うことを第一にしていた。『運命の子』からもたらされるという祝福を対価にという考えもある。だがそのお陰か、過去幾度と戦渦と飢饉を迎えようとも国が支配され傾くことはなかった。どの代の王も子宝に恵まれ時に疫病で危機を迎えたがこうして繋いでいる。
 菊の父親である現国王は戦渦が落ち着いた今、国の繋がりを強固とするため遙か海の向こうに独自の文化と歴史を持つ極東の王族を迎えた。土地が違えば食文化も違う。人種や風習も異なるために元々虚弱だった王妃は菊を産んですぐにこの世から去ってしまい菊もまた心臓が弱く、幼少の頃は周りを心配させていたが成長するに連れそれもなくなっていた。
 銀の頭が寄せられる。唇が鎖骨をかすめ、その高い鼻が首へ擦り寄せられると肌で感じるくすぐったさに僅かに身じろぐ。いつもとは異なる下からのぞき込むような姿勢と眼差しが甘えているように思えて唇がほころんだ。それを見つめていた赤い瞳が僅かに細められると、潜んでいた色が増す。
「風呂上がりの上昇した体温と纏う匂い。抱いてる時と同じもんが横からしてみろ」
「…それは、ええっと」
「反応するだろうが」
「…はい」
 光りの下で白金に煌めく銀糸と希有な紅玉の輝きを持つ瞳。長い鼻が絶妙なバランスで配置された美しい容貌がはたから見れば無表情で欲を紡ぐ。けれど産まれてからずっと共に過ごしてきた菊はその奥に隠れる感情を今度こそ正確に読みとった。
 厳しい訓練と長い軍役で作り出された筋肉から無駄なく構成された逞しい肉体。誰もがうらやむであうその身体に菊の未だ成長途中の細い身体が囲まれる。距離を置こうと身じろぎしても僅かに動くだけでいつの間にかまわされていた腕に互いの身体が密着する。夜風で冷やした身体へじわりと熱が伝わる。
「愛する奴が良い匂いさせながら素知らぬ顔で隣にいる」 
「え? え? ギルどうしちゃったんですか? お風呂で頭ぶつけちゃったんですか?」
「正直抱きてぇ。毎日な」
「……」
 常に口数が少なく、菊よりも一回り以上歳を重ねた伴侶が何でもない顔でさらりと情欲を欲する。
「我慢している俺を誉めろよ?菊」
 まるで小さな子供が強請るように甘く囁き、薄い唇がニヤリと笑う。いつまでも言われっぱなしでは主としての誇りに関わる。周囲からはおっとりとして静かな性格だと言われている菊は、その内に高い自尊心と熱情を持っていた。
「…不可抗力です。お風呂はやめられませんし。でも――」
 日に焼けぬ薄いバター色のこの身体は彼曰く”肌に吸いつくようにしっとりとして甘い”。その細い腕を目の前の太い首に回し力を込める。互いの鼻がかすめるほどに近く、どちらともない熱い息が触れた。
「毎日は、我慢しなくて良いですよ? ギル――」
 愛しい人の名前は最後まで紡がれることなく深く重ねられた唇の奥へと消えた。
 熱く、長い時間が今夜も訪れる。

熱帯夜01熱帯夜02熱帯夜03熱帯夜04熱帯夜05
2018/08/05(日) 09:25 護衛騎士と主君 PERMALINK COM(0)
 使用人に案内された庭園は古城の中でも修復が殆どされておらず、アーチ状の窓枠が連なる石造りの壁に蔦や苔で彩られていた。丁度フランシスが立っている入り口には木香薔薇やクレマチスがつたい、脇にはユーフォルビアとゲラニウムなどの草花が庭園を訪れる者を歓迎するかのように花を咲かせている。
 建物の隙間から届く日差しをうけ青々と輝く芝生と石畳がひかれた中央には休憩用にベンチと小さなテーブルが庭園の外観を崩さないようひっそりと置かれまるで時を止めてしまったかのような静寂に包まれる。
 木々のざわめきと鳥の鳴き声に混じり聞こえた歌声にフランシスは脚を踏み出すが使用人が肩を叩き制止する。口元に人差し指をたて"静かに"と、ウインクひとつの合図。今度は気配を消しゆっくりとその中央へと歩き出した。
 歌声が段々はっきりと聞こえてくる。低く、男性のものだ。その歌はゆったりとしたバラードのようで声音から相手への愛おしさが肌へ伝わってくる。自分の知る人物のあまりにも意外なことへの驚きのあまり鼓動が早く、緊張で額には汗までも浮かんでいた。ベンチを覆う草木の影に隠れていた銀髪をその瞳に映した瞬間、息が止まる。
「…俺はまるで夢か幻を見ているかのようだよ」
 陽気な挨拶も、かけようとした言葉も出てこず絞り出せたのはたったそれだけ。何度瞬きしても消えない幻にフランシスは苦笑う。
「久しぶりだな、ギルベルト。噂を聞いて来てみればお前、いつのまに騎士から聖母に転職したんだ?」
 銀髪の美丈夫がもっと幼い頃。やんちゃ小僧だった頃の笑い顔や、あの日から冷徹無慈悲と恐れられた無表情でもなく、先程までまるで絵画に描かれた聖母のような微笑みをしていた友人に目を細める。
 フランシスの言葉にギルベルトは何も返さず、止めていた身体をゆっくりと揺らし赤ん坊をあやし始めた。やがてフランシスの目の前に立つとギルベルトは目線を確認するように赤ん坊からフランシスへと移す。赤い瞳を見つめていた金の瞳が釣られるようにフランシスを見つめるとギルベルトの腕に大切に抱かれた赤ん坊が笑った。


「合格だとよ、良かったな。フラン」
「え?何、いつの間にお兄さん試されてたの?!というかお兄さんの美しさなら当然だよね?」


光の庭01光の庭02
2018/08/03(金) 04:59 護衛騎士と主君 PERMALINK COM(0)
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